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都市のレジリエンス索引
ベンチマークは世界25都市を対象とし、政策担当者・その他ステークホルダーによるリスクの理解促進と効果的政策の策定支援を主な目的としている。Economist Impactは都市のレジリエンスを『基幹インフラ』・『環境』・『社会組織的ダイナミズム』・『経済』という四つのカテゴリーに分類して検証・評価した。 本指数では、都市レジリエンスを「自然災害をはじめ、貧困やインフラの老朽化、人の移動などの長期的ストレスに対する都市の回避・対応・回復能力」と定義する。


















都市は長い歴史を通じてレジリエンス・耐久力・適応力のシンボルとなっている。
都市は長い歴史を通じてレジリエンス・耐久力・適応力のシンボルとなり、革新力・活力に彩られた人類のダイナミズム・進歩を牽引する存在として重要な役割を果たしてきた。特に都市がもたらす様々な機会は、人々を絶えず魅了している。
都市部の住民は2050年までに世界人口の3分の2超を占める見込みだ。
世界各国の政府機関はリスク管理体制の見直し、そして先行き不透明な時代の長期的リスクに備えた都市レジリエンスの強化を求められている。









ベンチマークは世界25都市を対象とし、政策担当者・その他ステークホルダーによるリスクの理解促進と効果的政策の策定支援を主な目的とする。
Economist Impactは都市のレジリエンスを『基幹インフラ』・『環境』・『社会組織的ダイナミズム』・『経済』という四つのカテゴリーに分類して検証・評価した。
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マップ
グラフ

[i] 都市の基幹インフラ(本調査では電気・水道・交通機関・建物・デジタル接続性などの指標を含む)には、住民の日常的なニーズを満たし、非常事態に対応し、災害からの復旧を支援する能力が求められる。

[i] 『環境』カテゴリーでは、環境面のレジリエンスを洪水・熱ストレス・大気汚染・防災管理・脱炭素・廃棄物管理という六つの指標に基づき評価する。急速な都市化と気候変動により、環境面の脅威は深刻化しつつある。極暑・海面上昇・大気汚染・廃棄物の増加など、都市は環境レジリエンスの強化に向けた様々な課題に直面している。

[i] 『社会組織的ダイナミズム』カテゴリーでは、電子政府プラットフォーム・犯罪発生率・安全性・所得格差・社会的保護制度などの指標を検証した。これらは非常時における社会としての対応力・回復力を大きく左右する要因だ。

[i] 都市は成長推進の要因として極めて重要な存在だ。過去50年間、機会の提供役として人口流入の原動力となってきた。『経済』カテゴリーでは、経済の頑健性、エクスポージャー・リスク、イノベーション・起業家精神、人的資本という四つの指標に基づき都市の経済的レジリエンスを評価した。
主要な論点

同カテゴリーで最高スコアを獲得したのはドバイ・上海・ニューヨーク・シンガポールだ。安定した財政基盤を持つこれらの都市は、数十年・数百年前に構築されたインフラの老朽化に直面するヨーロッパ都市と比べ新規インフラの開発が容易だ。一方、同カテゴリーではデジタル・インフラと交通機関の項目でスコアが低調だった。

『基幹インフラ』カテゴリーのスコアを押し下げる最大要因はデジタルサービスの提供に不可欠な「インターネット・サービスの質」だ。デジタル・テクノロジーや先進データ分析の活用は、リスク予測や既存体制の最適化、市民への情報発信にプラスの効果をもたらす可能性が高い。デジタル化の推進が(特に基幹インフラにおける)新たなリスクにつながる恐れもある。しかし対象都市の多くは、こうした事態を念頭に置いた体制づくりに取り組んでいる。

非常時への高い対応力と現在・将来的な温室効果ガス抑制を両立させたインフラという項目で高スコアを獲得した都市はごくわずかだ。長期的視野に基づくインフラ・体制構築において一つの鍵となるのは、サステナブル・デザインを取り入れた建築物(例:緑化屋根の設置、モジュラー工法の活用、エネルギー効率を高めるレトロフィット)に対するインセンティブの提供だ。しかしこうした取り組みは、現在のところ高所得国の都市以外では見られない。

例えば一部の都市では、洪水・熱ストレスなどへの対策として、緑化屋根やグリーン・インフラ(例:マングローブの植林)、ブルー・インフラ(例:湿地の環境回復)といった自然ベースのソリューションが活用されている。また再生可能エネルギーの導入やネガティブエミッション技術(例:炭素回収・貯留・除去)の活用を通じた脱炭素化の取り組みも進んでいる。しかし新興国の都市では、財政力の制約がこうした取り組みの拡大を妨げている。

今回の調査では、社会的少数者の支援に向けた包括的プランを掲げる都市がわずか九つにとどまっている。一方、非常事態における能動的対応を推進する都市が多く見られたのはプラス材料だ。この分野で高スコアを獲得、あるいは体制強化に取り組む都市は、全体の半数を上回っている。

特に経済面のセーフティーネット整備が進まない現状は、非常時における回復能力強化の足かせとなっている。都市の経済的レジリエンスを評価する上でもう一つ重要な基準となるのは、イノベーション醸成の能力だ。交通渋滞や水ストレスといった様々な課題を解消する上で、革新的ソリューションは欠かせない。しかし対象都市の多くは、スタートアップ・エコシステムに関する指標でスコアが低迷している。
基幹インフラ
未開発地域で新たに近代インフラ開発を進めた新興都市が、レガシー・インフラが足かせとなっているヨーロッパ都市を上回り、高スコアを獲得


エネルギー安全保障の重要性
自治体による公共インフラの管理は、多くの都市にとって課題だ。老朽化が進むインフラの改善・更新に向けた大規模投資が必要だが、政府・自治体の資金力には限りがあり、他の財源確保が不可欠だ。
また世界各国の都市はエネルギー安全保障の強化に向け、効果的かつコスト効率の高い方策を模索している。再生可能エネルギー利用拡大の一環として取り組みを進めることが望ましい。例えば、太陽光ミニグリッドは、遠隔地における電力供給ひっ迫時の対策として有効だ(バングラデシュでは人口の14%が住宅用太陽光発電システムを導入)。エネルギー貧困対策も、格差解消や極暑への対応に欠かせない。バルセロナ市の事業者は、経済的問題を抱える市民を対象にエネルギー料金の引き下げを実施している。
エネルギー安全保障の重要性
基幹インフラの管理は、多くの新興国都市にとって課題だ。対象都市の総人口のうち、電力不足に直面する住民は1億700万人以上に達する。日常生活に支障をきたす、あるいは災害の被害が増幅するなど様々なリスクが懸念される。
ニューデリー
3206万5760人
3206万5760人
ニューデリー, インド
ダッカ
2247万8117人
2247万8117人
ダッカ, バングラデシュ
メキシコシティ
2208万5139人
2208万5139人
メキシコシティ, メキシコ
ラゴス
1538万7639人
1538万7639人
ラゴス, ナイジェリア
ジャカルタ
1107万4811人
1107万4811人
ジャカルタ, インドネシア
ケープタウン
480万954人
480万954人
ケープタウン, 南アフリカ
107M








エネルギー安全保障の重要性
自治体による公共インフラの管理は、多くの都市にとって課題だ。老朽化が進むインフラの改善・更新に向けた大規模投資が必要だが、政府・自治体の資金力には限りがあり、他の財源確保が不可欠だ。
また世界各国の都市はエネルギー安全保障の強化に向け、効果的かつコスト効率の高い方策を模索している。再生可能エネルギー利用拡大の一環として取り組みを進めることが望ましい。例えば、太陽光ミニグリッドは、遠隔地における電力供給ひっ迫時の対策として有効だ(バングラデシュでは人口の14%が住宅用太陽光発電システムを導入)。エネルギー貧困対策も、格差解消や極暑への対応に欠かせない。バルセロナ市の事業者は、経済的問題を抱える市民を対象にエネルギー料金の引き下げを実施している。








基幹インフラの管理は、多くの新興国都市にとって課題だ。対象都市の総人口のうち、電力不足に直面する住民は1億700万人以上に達する。日常生活に支障をきたす、あるいは災害の被害が増幅するなど様々なリスクが懸念される。

調査対象都市の住民のうち1億700万人以上が電力網不備の状態に置かれている。
不可避なリスクへの対応
都市は今後も、未曾有の極暑・洪水の頻発・大気汚染などがもたらす経済・社会・健康面の影響に直面する可能性が高い。
長期的視点に基づいたインフラ設計は、異常気象の影響軽減に不可欠だ。例えばシンガポールは、極暑対策として緑化屋根・緑の回廊の整備を進めている。こうしたソリューションは、気温を1〜2℃低下させ、日よけ効果も期待できる。



環境
長期的視野に基づく環境災害対策には、投資拡大と将来を見据えたビジョンが生み出す革新的ソリューションが欠かせない









全住民を対象とする防災体制
今回調査対象となった都市は様々な洪水リスクに直面している。そして世界の都市は、気候変動の影響を受け刻々と変化する水関連リスクから住民を守り、認知向上・適応を進める能力を試されている。深刻化するリスクへの対応には、インフラ・ガバナンス体制構築や人的資本・コミュニケーションの強化に向けた投資が不可欠だ。
ダッカ・ジャカルタ・上海の3都市は、今年記録的な暴風雨・豪雨に伴う洪水を経験している
こうした課題の多くは、低所得国の都市へ特に大きな影響を及ぼしている。高所得国でも、低所得層の多い地域は都市型水害のリスクが相対的に高い。
バンコク・ダッカ・ジャカルタなど、洪水リスクの高い都市の多くはアジア太平洋地域の新興国に集中している。
グラフ名:河川の洪水リスク
グラフ名:河川の洪水リスク
全住民を対象とする防災体制
今回調査対象となった都市は様々な洪水リスクに直面している。そして世界の都市は、気候変動の影響を受け刻々と変化する水関連リスクから住民を守り、認知向上・適応を進める能力を試されている。深刻化するリスクへの対応には、インフラ・ガバナンス体制構築や人的資本・コミュニケーションの強化に向けた投資が不可欠だ。
ダッカ・ジャカルタ・上海の3都市は、今年記録的な暴風雨・豪雨に伴う洪水を経験している
グラフ名:河川の洪水リスク
こうした課題の多くは、低所得国の都市へ特に大きな影響を及ぼしている。高所得国でも、低所得層の多い地域は都市型水害のリスクが相対的に高い。
バンコク・ダッカ・ジャカルタなど、洪水リスクの高い都市の多くはアジア太平洋地域の新興国に集中している。
グラフ名:河川の洪水リスク
早期警戒システムの重要性


世界全体の3人に1人は、依然として早期警戒システムの対象となっていない*
早期警戒システムの重要性
暴風雨・極暑の24時間前に情報共有を行うことで被害を3分の1程度軽減できるなど、早期警戒システムの導入には大きな効果が期待できる。新興国で早期警戒システムの開発に8億ドル[約1465億円]を投資すれば、年間30億から160億ドル[約5494億円から2兆9300億円]の被害を回避可能だ**。 * 国連防災機関 ** 気候変動適応グローバル委員会
社会組織的ダイナミズム
社会的少数者は非常事態の影響を特に受けやすい。所得格差や健康・ウェルビーイングに関する指標の低スコアを受け、同カテゴリーでは対象都市のパフォーマンスが低調だった




“貧困状態に陥れば、洪水リスクの高い地域の移転が難しいし、借家の住人が家に安全対策を施すことも容易でない。社会的孤立状態にあれば、極暑での生存率も低下するだろう”
Fiona Twycross 氏ロンドン市 防災・レジリエンス担当副市長





グラフ名:“備え”の文化
キャプション:データは備えの文化醸成に向けた認知度向上の評価に基づく
備え”の文化が確立された都市の 住民は危機対応能力が高い
特に高スコアを獲得した都市では、包括的かつ詳細にわたる情報発信の取り組みが目立つ
新興国では備えの文化の醸成度が都市によって大きく異なるが、ニューデリー・メキシコシティの取り組みは他の都市にとっても有用な参考事例だ。
例えばデリー災害管理局は、メディアを通じた意識向上キャンペーンや防災訓練を実施し、火災・洪水・地震など非常事態の発生時、あるいは発生前後における安全確保のガイドラインを提供している 。
経済
都市が掲げるレジリエンスの高い強化目標を実行に移すためには、安定した経済環境と活力あるイノベーション・エコシステムが不可欠だ





グラフ名:都市のイノベーション・エコシステム
キャプション:パフォーマンス・資金調達環境・市場リーチ・コネクテッドネス・人材の質と経験値・知識ベースといった要因に基づく企業イノベーションの質を評価。データは、Startup Ecosystem Report[2023年」を参照。
注:このグラフは上位15都市のスコアを示している。
喫緊の課題を克服するための最先端ソリューションを生み出すイノベーショ ン・エコシステムの構築には、都市によって大きな格差が生じている。
イノベーティブなビジネス・エコシステムは、企業・産業による市場変化への対応と、都市のレジリエンス強化に役立つソリューションの創出を後押しする。また都市の高い適応能力は、非常時における企業の耐久力強化や競争力の維持につながる。だが、こうした環境を実現するためには人的資本への投資を強化し、急速に変化を遂げる経済環境への適応力・スキルを備えた人材育成を進める必要がある。
この指標では、上海・ニューデリーを含む新興国の都市が、西側諸国の高所得都市の大半を上回るパフォーマンスを見せた。
おわりに: 都市レジリエンス強化に向けた取り組みの展望
都市は人やモノが絶え間なく移動することでエネルギーが生み出される場所だ。そして自然・人為的災害が、基幹インフラや市民生活、社会構造に大きな影響をもたらす場所でもある。自然災害や経済的・社会的危機などあらゆる非常事態へ対応するため、都市レジリエンス強化の重要性はこれまで以上に高まっている。









重要なポイント

この取り組みには情報の民主化が不可欠だ。非常時の対策を含め、全ての住民が政府や自治体の情報へアクセス可能な環境を整備する必要がある。デジタルメディアを活用して情報を住民へ同時配信するなど、一部の都市(例:シンガポール)は効果的取り組みを行っている。“備え”の文化を醸成し、非常時の危機管理能力を高めるためには、政府や自治体、そして草の根レベルの研修と啓発を通じて災害対応の牽引役となる人材を育成することが重要だ。また自治体は情報共有の重要性を認識すると共に、誤報や偽情報の拡散防止と一貫した危機対応の実現に向け、デジタル・プラットフォームとの連携を検討すべきだろう。

住民の存在なくして都市を語ることはできない。社会的一体性の強化に向けた取り組みを行うことで分断を回避し、都市としての対応力を強化することができる。自治体のリーダーシップと市民の関与を通じた生活環境の向上は、その意味でも重要な意味を持つ。

国連が掲げるこの目標の実現に向け、政府や自治体は密接な連携を通じて二つの課題(投資格差・政策格差の是正)を克服する必要がある。またシステムを効果的に機能させるためには、防災訓練や研修、啓発プログラムなどを通じたコミュニティの認知度向上・関与も欠かせない。

レガシーインフラのレトロフィットや再生可能素材の活用基準を満たす取り組みへの助成金支給など、企業・個人レベルの長期リスク対応へ具体的なインセンティブを提供すれば、防災体制の強化につながるはずだ。

刻々と変化を遂げる気候変動・都市化という課題へ効果的に対応するためにも、政策の継続的検証は不可欠だろう。対策の課題特定とデータに基づく意思決定も重要だ。政策の導入状況・効果をモニタリングすることで、責任の所在の明確化や、財政支出の効率化・透明性向上、市民の信頼確保を図ることもできるだろう。

スタートアップや企業、研究機関による先進的ソリューションの開発環境を都市が提供できれば、複雑な課題の克服を後押しできるはずだ。またテクノロジーは、レジリエンス強化につながるリスクの特定、およびそれらの予測と監視にも欠かせない。
“レジリエンス戦略は、自治体職員のデスクワークによって生み出されるものではない。コミュニティの代表者や社会的少数者など、様々なステークホルダーを交えた対話を実施することが重要だ”
Resilient Cities Network プログラム・実施統括 グローバル・ディレクター Katrin Bruebach氏









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して 進化を加速させる
イノベーションによって社会のレジリエンスが高まりますが、逆に新たなリスクが表面化することもあります。保険会社である東京海上キルン(Tokio Marine Kiln/TMK)のブラッド・アイリックCEOが、よりたくましい社会を実現するためのテクノロジーや取り組みを支援する東京海上キルンの取り組みについて説明します。

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"保険契約の本当の価値は、保険が必要になったときに初めて分かるものです。東京海上日動火災保険の常務執行役員(損害サービス担当)である太田征宏氏が、保険を通じてお客様をお守りし、災害後の生活再建を支援するための取り組みを紹介します。"

お客様の“いざ” に寄り添う。
保険には「新たなことに取り組む際、不測の事態を乗り越えるための安心をお客様に届ける」ことと、「大規模な災害から社会を守る」、という2つの重要な役割があると東京海上グループは信じています。 東京海上グループの小宮暁CEOに、レジリエントで持続可能な社会の実現を目指す同社の取り組みを伺いました。

