VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)というキーワードで語られる時代の中で、新たなリスクも生まれてきています。東京海上グループはどのようなパーパス(存在意義)で対応していくのでしょうか。
小宮氏: 東京海上グループは1879年の創業以来、「お客様の“いざ”をお守りする」というパーパスの実現に向けて取り組みを重ね、被災されたお客様や未知の領域に挑戦するお客様に寄り添ってきました。
かつてないほど変化の著しい時代、私たちが直面する課題に対する革新的なソリューションが求めてられています。東京海上は日本で創業した企業として、140年以上の歴史の中で大規模な自然災害を何度も経験してきました。日本の国土面積は世界のわずか0.25%、GDPは世界の6%に過ぎないにもかかわらず、自然災害による経済損失では世界全体の20%以上を占めています。私たちはこのような経験を通じて、常に保険契約を通じたお客様とのお約束をお守りし、お客様や地域社会と共に、よりしなやかでたくましい社会を作り上げることに取り組んできました。

東京海上ホールディングス 取締役社長 兼 グループCEO 小宮暁氏
「私たちは、大規模災害の防災・減災に取り組むとともに、災害の根本原因を見極めることで、 社会のレジリエンスを高めていきます」
このような取り組みの一環として、東京海上グループは、保険金をお支払いするだけでなく、新しいテクノロジーを活用したリスクの見極め、事故発生前の防災・減災等のロスコントロール、事故発生後の早期復旧・復興や再発防止等の領域のサービスを着実に拡充しています。

東京海上グループは、お客様と地域社会のレジリエンスを向上するため、新しいテクノロジーをどのように活用していますか?
小宮氏 私たちは、お客様に安心していただけるサービスを素早く提供するために、人の力とテクノロジーのベストミックスをめざしています。テクノロジーは日々進化していますが、卓越したサービスを提供するためには、その進化するテクノロジーを活用してより良いサービスを提供できる社員の力が重要です。
保険業界は昔からデータに基づきリスクを評価していますが、私たちはテクノロジーの進化を常に2つの側面から見ています。1つめは、新しいテクノロジーは新たなリスクを生み出すということ。そのような新技術の導入に伴うリスクを、保険を通じて軽減することに取り組んでいます。2つめは、私たち自身が新しいテクノロジーを活用してお客様に提供するサービスを拡充すること。
この2つの側面をよく表している例が生成AIです。無限の可能性を秘めた生成AIを導入するにあたっては、そのリスクであるデータや知的財産の保護に留意する必要があります。当社グループ内では、生成AIを活用して社員の意思決定を支援する方法の開発に取り組み、同時にお客様や社会に対しては、生成AIの導入に伴うリスクの適切な管理をサポートするサービスの提供を検討しています。

異常気象や自然災害が目に見えて増加しているなか、東京海上グループは持続可能な未来の実現に対してどのような貢献を果たそうとしているのでしょうか?
小宮氏: 異常気象による自然災害の頻度と強度の高まりは保険業界が直面している最大の課題です。私たちは、大規模災害の防災・減災に取り組むとともに、災害の根本原因を見極めることで、社会のレジリエンスを高める必要があります。例えば、当社グループでは衛星やドローンを活用した迅速な損害査定や、パラメトリック保険を開発して迅速な支払いに取り組んでいます。また、お客様や地域社会とともに、企業の経済活動や市民生活におけるレジリエンスの強化を支援しています。
気候変動に対処し、保険の力を活かしてネットゼロ社会への移行を促進するための取り組みも進めなければなりません。災害関連データの社会への共有や、保険を通じたリスクの引受、新たな環境保護プロジェクトへの投資まで、保険は重要な役割を担っています。
この理念と持続可能な社会を実現したいという思いは、東京都心に2028年竣工予定の新しい本店ビルの設計にも取り入れられています。
建設にあたっては、国産木材と再生可能エネルギーを活用し、従来の工法に比べて二酸化炭素排出量を半減させることを目指しています。新本店ビルは、この先も持続可能な社会の実現を図る東京海上グループの取り組みを象徴する存在になるでしょう。東京海上グループはこれからも、様々な社会課題を解決しながら可能性に満ちた世界で次の一歩を踏み出そうとするすべての人々や企業のために、人々の新しい生き方や企業をお支えし、社会の発展を加速させるための安心をお届けします。